尋常性乾癬とは?

乾癬は皮膚の炎症症状を伴う慢性の皮膚疾患です。乾癬の方の病変部は正常な皮膚と比べて10倍以上の速度で生まれ変わり、増殖が過剰な状態になっています。過剰に増殖した細胞により、皮膚が赤く盛り上がり、表面に白く厚い角質ができてはがれ落ちます。「かんせん」という名前から「人から人に感染する」と誤解されやすいのですが、他の人に感染する病気ではありません。最近は様々な治療薬が発売され最新の生物学的製剤(飲み薬、注射薬)があり当院でも積極的に導入しております。
乾癬の種類
症状によって5つのタイプに分けることができます。
- 尋常性乾癬
- 関節性乾癬
- 膿疱性乾癬
- 滴状乾癬
- 乾癬性紅皮症
乾癬の原因について完全に解明されていませんが乾癬になりやすい体質があり、そこに感染症や精神的ストレス、薬剤などのさまざまな要因が加わって発症すると考えられています。糖尿病、高脂血症、肥満なども悪化要因になることがいわれています。
尋常性乾癬の治療

皮膚の状態に合わせて治療を行います。基本は、ステロイド剤やビタミンD誘導体の外用薬で治療します。皮膚症状が治りにくい方、皮膚症状が悪化されている方には紫外線療法、内服療法(免疫抑制剤、PDE4阻害薬、ビタミンA製剤、TYK2阻害薬)、生物学的製剤(バイオ製剤)と呼ばれる抗体の注射を行うこともあります。
従来の治療では十分な効果が得られない方への治療剤
当院では、従来の治療では十分な効果が得られない方への治療剤として、下記の治療剤を取り扱っています。患者さんのこれまでの薬歴や治療法など考慮し、最適なものを処方しています。これまでどうしても症状が改善されなかった方は、当院へお気軽にご相談ください。
尋常性乾癬の注射治療剤コセンティクス

コセンティクスは「IL-17A」の働きを抑える生物学的製剤として2015年に国内で初めて承認されたお薬です。コセンティクスは治療効果が高く、比較的早い段階で効果が出やすいのが特徴です。IL-17Aは細菌やカビの感染を防ぐ働きもしているため、IL-17Aの働きを抑えるコセンティクスを使用すると感染症にかかりやすくなります。とくに皮膚や粘膜における感染(カンジダ症など)に注意が必要です。
- 適応
- 尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬
- 年齢
- 6歳以上
- コセンティクス®の投薬スケジュール
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初回に投与した後は、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後に投与します。それ以降は4週間の間隔で投与を続けていきます。
尋常性乾癬の注射治療剤スキリージ

生物学的製剤のひとつで、IL(インターロイキン)-23p19という物質の働きを抑えるお薬として2019年に発売されました。スキリージは3か月に1回、注射1本の投与で治療が完了する製剤ですので、通院の手間や治療に関するストレスが少なくて済む薬剤です。治療効果も高く、患者さんにとってメリットの大きい薬剤です。スキリージは免疫の働きを弱める作用があるため、スキリージの使用中は感染症にかかりやすくなる可能性があるため、日常生活では感染防御のために手洗い、うがいなどに注意していただきます。
- 適応
- 尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬
- 年齢
- 15歳以上
- スキリージ®の投薬スケジュール
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初回に投与した後は、4週間後、それ以降は12週間の間隔で投与を続けていきます。
尋常性乾癬の内服薬ソーティクツ

ソーティクツは、TYK2(チロシンキナーゼ2)阻害薬と呼ばれ、これまでの飲み薬とは異なる作用をもつ乾癬の治療薬です。乾癬には、Ⅰ型IFN,IL-23,IL-17,TNFαと呼ばれる様々なサイトカイン(炎症性物質)が関与しています。TYK2は、Ⅰ型IFN、IL-12,IL-23のサイトカイン受容体からの炎症シグナルを細胞核伝える役割を担っております。TYK2阻害することで、乾癬に関係するサイトカインを抑え、乾癬症状を抑える効果があります。
- 適応
- 尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬
- 年齢
- 15歳以上
- 用法容量
- 1日1回1錠内服(服薬時間の制限はありませんのでいつでも飲むことができます。)
尋常性乾癬の内服薬オテズラ

オテズラは2017年に承認され、現在では広く用いられている乾癬の内服治療薬です。乾癬は体内の免疫バランスの異常によって、皮膚や関節に異常な炎症を引き起こす病気です。オテズラは「PDE4阻害薬」とも呼ばれていますが、乾癬の病態にはホスホジエステラーゼ4(PDE4)の過剰な発現や、それに伴う炎症性サイトカインの大量産生が関与していると考えられています。オテズラはそのPDE4を阻害することで炎症性サイトカインの産生を調節し、皮膚の炎症を抑制(免疫調整)する働きがあります。
- 適応
- 尋常性乾癬、関節症性乾癬
- 年齢
- 15歳以上
- 用法容量
- 1日2回内服(内服当初は少量から漸増していきます)